ファクタリングとは

黒板に向かう女性
ファクタリングとは、保有する売掛金・未収金といった「債権」を専門会社に売却し、早期現金化を図る資金調達です。
サービスの概要や仕組み、手数料はどのくらい掛かるのか等についてまとめました。

債権について

ファクタリングの前に、まずは「債権」についておさらいしていきましょう。
債権とは、簡単に言うと“なにかをしてもらえる権利”のことを指し、例えば「お金を返してもらえる権利(金銭債権)」や「サービスを受けられる権利」等が挙げられます。

企業取引では業務を行った月の翌月や翌々月に取引先に請求(1月末締め翌月末日払い等)するのが一般的ですので、取引先に対して業務の対価を請求できるという金銭債権を有していることになります。
この債権のことを一般的に「売掛金」もしくは「未収金」と呼び、企業にとっては現金預金と同じく、資産としての性質を持っているのです。
そして、この債権は第三者に売却することも可能であり、債権を譲渡して現金化する行為をファクタリングと呼びます。

ファクタリングの種類

ファクタリングには、2社間方式と3社間方式に大分されます。
両者の手続き、法的効果、手数料等の違いについて確認していきましょう。

2社間ファクタリング
2社間ファクタリングのフローチャート

2社間ファクタリングは、文字通り売掛金を売却しようとする企業(利用企業)とファクタリング会社の「2社間のみ」で行う方法です。
具体的には、ファクタリング会社に売掛債権を譲渡(図②)し、売買代金をファクタリング会社から受け取ったのち(図③)、期日に取引先より支払われた売掛金(図④)をファクタリング会社に引き渡す(図⑤)という流れで取引が行われます。
「債権が譲渡されたこと」が取引先に知られてしまうと、資金不足が懸念され関係性が崩れてしまう可能性がありますが、同方法であれば取引差に周知されません。

3社間ファクタリング
3社間ファクタリングのフローチャート

一方、3社間ファクタリングは買い取った売掛金をファクタリング会社が自ら回収する方法で、一般的な債権譲渡の形であると言えます。
まず、債権を売却した企業(ファクタリング利用企業)は、取引先に債権譲渡を行った旨の通知を行う又は取引先からの承諾(図①)を得なければなりません。
債権を譲渡された取引先は、期日にファクタリング会社に売掛金の金銭を支払い(図④)、一連の取引は完了します。

法律的な問題点

債権譲渡については民法にも記載されている合法の取引です。
前述した通り、本来であれば債権が譲渡されたことについて通知若しくは承諾を得なければならないはずですが、この手続きを省略しても問題ないのでしょうか。
実は、この通知と承諾は「対抗要件」と呼ばれるもので、契約の成否を関係するものではありません。

対抗要件について

対抗要件とは、簡単に言うと「自分が債権者である旨」の主張を債務者に対して行うための条件のようなものです。
なぜならば、通知や承諾を行わずに債権が譲渡されてしまうと、債務者(取引先)は誰に対してお金を支払うのかが分からなくなってしまうためです。
つまり、2社間ファクタリングはファクタリング会社側が債権者である旨の主張ができないというだけで取引自体は有効となります。
ただし、対抗要件を満たしていない状態となるため、ファクタリング会社にとっては非常にリスクの高い取引となるのです。

給与ファクタリングの違法性

給与ファクタリングとは、文字通り「給料」をファクタリング会社に買い取ってもらう取引です。
給料日前に現金を手に入れられるというメリットがありますが、ファクタリング会社側に手数料を支払わなければなりませんので、本来受け取るはずであった給与額を大きく下回ってしまうというデメリットがあります。

また、同取引は金利を付してお金を返済する「金銭消費貸借契約」に酷似しており、判例においても「給与ファクタリングは実質的に貸金業に当たる」として、貸金業法に基づく登録が必要と判断しています。
無登録の貸金業者は違法業者となりますので、利用は避けるようにしてください。

手数料について

前述した通り、2社間ファクタリングは対抗要件を満たしていませんので、ファクタリング会社にとってリスクが高い取引です。
一方で、3社間ファクタリングは対抗要件を備えているため、取引先に直接請求することが可能となり、リスクが低い取引と言えます。

したがって、2社間ファクタリングは売掛金の10~30%・3社間ファクタリングは3~10%と、リスクに応じて手数料が異なっています。
1円でも高く売掛金を買い取ってもらうのであれば3社間ファクタリングを選ぶべきですが、取引先に債権譲渡の事実が必ず知られてしまいますので、関係が崩れる可能性も否定できません。
状況に応じて判断する必要があるでしょう。

2社間ファクタリング 3社間ファクタリング
手数料 10~30% 3~10%
同意又は承諾 不要
(周知されない)
必要
(周知される)
電話を持ったオフィスレディ
ファクタリング取引の9割以上は2社間ファクタリング方式が採られています。
ただし、医療サービスやインフレ整備による建設費(請負代金)については行政等に対して有する債権ですので、周知されても関係性が崩れる危険が無く、3社間ファクタリングが有効と言えます。
状況や債権の性質によって使い分けると良いでしょう。
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監修者情報
木村 秀幸
ファイナンシャルプランナー2級・宅地建物取引士・行政書士・商簿記2級保持者。士業系事務所勤務の経験を活かし、数多くの金融系サイトの監修・執筆を手掛けた実績を持つ。