生命保険を利用した資金調達
そんなときは生命保険を利用した資金調達を検討してみてはいかがでしょうか。
生命保険に関する調達法には「生命保険貸付」「生命保険買取」の2つが代表的です。
解約返戻金の活用
解約返戻金のある生命保険に加入している方は、解約返戻金を担保にすることで「契約者貸付」が利用できます。
審査は原則不要で消費者金融に比べて金利が低いなどのメリットがありますが、返済できなくなると保険契約を失効し、解約返戻金も受け取れなくなってしまいます。
将来的に返済ができなくなる可能性が少しでもあれば、慎重に検討してください。
利用条件と特徴
生命保険の契約者貸付には以下の通り特徴・ポイントがありますので、ご利用を検討の際は必ず押さえておきましょう。
- ブラックや無職、総量規制の上限を超えている方でも利用可能
- 審査がないので職場への在籍確認も無し
- 借入金は信用情報機関に登録されない
- 貸付額の上限は解約返戻金の6~9割
- 金利は3~8%/年が相場
- 申込から入金まで最短で2~3営業日
- 柔軟な返済プランがある
- 借入残高が基準額を上回ると保険契約が失効
契約者貸付は保険業法に則った貸付サービスであり、貸金業法の影響を受けません。
そのため、審査及び信用情報機関の照会等が無く、相応の解約返戻金を受け取れる保険契約があればブラック・収入が無い方でも利用できます。
さらに、万一返済できなくなった場合でも保険契約を失効するペナルティを受けるのみで、カードローン・消費者金融で事故を起こしたときとは異なり、信用情報に記載されることもありません。
契約者貸付のリスク
万が一返済できなくなってしまった場合は保険契約が失効する可能性があります。
また、貸付上限額は現時点の解約返戻期より少なくなりますので、返せなくなる可能性が高いと事前に分かっている場合は、契約者貸付ではなく解約してしまった方が良いです。
なお、若い年齢で加入した等で比較的安い保険料で済んでいる場合もご注意ください。
医療疾病保険も含まれた総合保険に加入している場合、一度保険を失効してしまうと再契約時の保険料は割高となってしまいます。
このように、契約者貸付は多くのメリットと高いリスクが混在している借入方法なのです。
借入限度額の例
生命保険の契約者貸付は、契約内容と加入期間によって条件が大きく変わります。
日本の生命保険では、死亡保障のみを付けた終身生命保険や積立保険の場合、中途解約すると積立額に対して解約返戻金が70%程度に減額されるケースがほとんどです。
そして、借入限度額は解約返戻金の80%となっておりますので、仮に月々の保険料支払いが2万円だった場合は以下のように概算を出すことが出来ます。
- (月々の保険料)20,000円×12か月=(年間保険料)240,000円
- (年間保険料)240,000円×70%=(想定解約返戻金)168,000円
- (想定解約返戻金)168,000円×80%=(貸付上限額)134,400円
つまり、加入期間が1年であれば134,400円、加入期間が10年であれば1,344,000円、加入期間が20年であれば2,688,000円が貸付の上限額となる計算です。
このように、月々に支払う保険料が一定であれば、解約返戻金も一定のペースで増えていきます。
なお、保険会社の多くは貸付限度額の設定を10万円単位に設定しているため、実際の解約返戻金は計算した金額よりも少なくなるケースが多くなっています。
保険料さえ支払えば失効しない?
返済は生命保険会社や契約条件によって異なりますが、「自由返済」としているケースがほとんどです。
返済しないと当然利息が増えていきますが、月々の保険料の支払いさえ滞らなければ貸付限度額の方が増額されていくためです。
もちろん、返済しなければ利息が膨れ上がってしまうので、可能な範囲で早期完済を目指した方が良いのは言うまでもありません。
生命保険の契約によって返済のルールが異なりますので、長期間にわたって返済ができない場合は問い合わせをするなどして詳細を確認しておきましょう。
生命保険買取とは
生命保険の買取とは、文字通り近い将来に保険金の支払い見込みがある契約の解約返戻金や満期保険金を買い取ってもらう資金調達法です。
例えば医師から余命宣告を受けたケースなどが挙げられ、仕組みだけ聞くとグレーな資金調達方法に感じられる方も多いかもしれません。
しかし、こちらはしっかりと法律で認められている方法であり、特に欧米諸国では広く活用されています。
買取生命保険の大まかなポイントは以下の通りです。
- 被保険者・買取業者・生命保険会社の3社間で契約する
- 解約返戻金がある場合の買取額は解約返戻金より高く死亡保険金より安い
- 将来の保険料支払いがある場合は買取した者が負担する
- 死亡保険金の受取人は買取業者
- 欧米では広く普及しているが、国内では高齢者を狙った悪徳業者も多い
生命保険買取の活用例
例えば、30歳から年間20万円の保険料を払う終身生命保険で、現在は55歳(加入期間25年)だった場合、保険料の総支払額は500万円で解約返戻金は約350万円(70%)です。
満期だとさらに解約返戻金の割合が上がりますので、満期が65歳・解約返戻率が107%だと仮定すると、満期時で749万円(総支払額700万円×解約返礼率107%)を受け取れる計算となります。
この場合、加入者は55歳時点で解約してしまうと350万円しか受け取ることができませんが、生命保険買取であれば400万円で売却できる可能性があります。
なぜ高く買い取れる?
なぜ生命保険の買取業者は、通常の解約返戻金よりも高い価格で買い取ることができるのでしょうか。
それは、最終的には買取額を上回るお金が買取業者に入ってくるためです。
上記の例で言うと、400万円で買い取った生命保険は残り200万円の保険料を支払わねばなりませんが、最終的に749万円の返戻金を受け取ることができます。
つまり、解約返戻金749万円から買取金額400万円と残りの保険料200万円を差し引いたとしても、150万円弱の利益が生まれます。
なお、万が一被保険者が途中で死亡した場合は、より高額な「死亡保険金」が支払われる上に、今後保険料を支払う必要もありません。
したがって、買取業者はどう転んだとしても損をすることがないのです。
トラブルになることも
生命保険の買取は、売主・買主双方にメリットがあるシステムです。
しかしながら、日本ではまだまだ認知度が取引であり、トラブルに発展するケースも珍しくはありません。
情報商材や投資などの商品を売るために生命保険買取で資金調達させたり、解約返戻金とほぼ同額の条件を提示したりと、制度を悪用した悪徳業者も多くなっています。 また、買取には生命保険会社側の同意が必要なのですが、拒否されるケースも多いようです。
さらに、大手消費者金融や銀行カードローンのようなスピード感は無く、契約までに数日から数週間を要してしまうこともありますのでご注意ください。
ご利用の際は信頼性が高い業者をしっかり見極めるようにしましょう。
審査が不要なため、信用情報機関の照会や登録に不安要素がある方でも気軽に利用できるという利点があるものの、満期まで待った方がお得な可能性も十分にあります。
ご利用の際は、必ず返済の目処や保険を失効した時のリスクを精査するようにしてください。
監修者情報
木村 秀幸
ファイナンシャルプランナー2級・宅地建物取引士・行政書士・商簿記2級保持者。士業系事務所勤務の経験を活かし、数多くの金融系サイトの監修・執筆を手掛けた実績を持つ。
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