なぜ消費者金融は衰退したのか

金融庁発表の資料によると、消費者金融の貸付残高は2000年~2010年でおよそ50%減少しています。
2010年以降も衰退の勢いは止まらず、2015年度の業界動向では2010年比で10%のマイナス成長になりました。
消費者金融がここまで衰退してしまった背景について紹介します。
過払い金問題だけの話ではない
2006年以降、グレーゾーン金利がNGになり過去に遡って過払い金請求ができるようになりました。
過払い金問題によって消費者金融業者の財政は大きく悪化して、倒産した消費者金融も多数あります。
このことが消費者金融業界に与えた影響は大きいですが、貸付残高の減少に関しては別の要因が考えられます。
景気に関わらず「借金」に対する需要への大きな変化はなく、単純にお金に困った人が消費者金融以外の資金調達法に流れている事がこの衰退の根本的要因です。
銀行カードローンの躍進

消費者金融が衰退する中で、大きな成長を遂げたのが銀行のカードローンです。
銀行からの融資には、審査が通りづらく、契約の手間がかかるという大きなデメリットがありました。しかし消費者金融が衰退したことによりそれらの民間企業を銀行が吸収し、少額からの手軽な貸し付けをするようになりました。
銀行カードローンは、その圧倒的資金力を後ろ盾にしていることもあり、これまでの消費者金融に比べて金利が低く、あっという間に普及していきました。
それに対し、生き残った大手消費者金融は、総量規制によって以前よりも審査を簡単に通せなくなったのです。
その他のサービスの躍進
ネット決済など後払い方式ができるサービスが増えて、現金を必要とする場面は年々減少傾向にあります。
つまり、お金が足りなくなっても、現金を使わずに乗り切る方法が増えたのです。
また、クレジットカードのショッピング枠を現金化したり、不要なものをネットオークションで高く売るなど、身近なものを使って現金が調達できる便利なサービスが多数登場してきました。
消費者金融も以前に比べてダークなイメージが払拭され、利便性も向上していますが、契約書類の発行や勤務先への在籍確認など、利用者にとって不都合なアナログ方式がいまだに多数残っており、敬遠されがちになっています。
テレビCMで一気に認知された
「過払い金請求」

一時期テレビで毎日のように「過払い金請求」のCMが流れていたことは記憶に新しいかと思います。
過払い金請求とは、利息制限法の上限金利を超えて支払ったお金を貸金業者から返してもらうための手続きです。
場合によっては百万単位のお金が返還されることもあり、これによって実際に救われた人は多いです。
当時のCMでは過払い金請求のメリットだけが全面的にアピールされていました。
それは当然のことですが、過払い金請求には良いことだけではなく、デメリットもあったのです。
貸金業者からの借入ができなくなる
過払い金返還請求を受けた貸金業者は、その利用者を「社内ブラック」リストに登録します。
これにより強制解約となり、まず再びその業者で借入をするのは難しくなります。
他の貸金業者から借入をすることはできますが、過払い金請求をした業者とは絶縁になってしまうと考えたほうが無難です。
業者からしてみると、
「自分で金利にも納得して借りておいて、後から何してくれてるんだ!」
といった気持ちでしょう。当然と言えば当然のことかもしれません。
クレヒスに傷がつく

債務の完済後に過払い金請求を行う場合は問題ありませんが、返済中の過払い金請求は債務整理として扱われます。
これはクレジットヒストリー(クレヒス)事故情報として登録されてしまう可能性が非常に高いです。
たとえ残っていた借金が1円だけだったとしても、です。
クレヒスに傷が付けば、当分の間新規でのカード作成や借入は困難になります。また、住宅ローンや自動車ローンも組めなくなってしまいます。
借金返済中の過払い金請求は注意が必要です!
悪徳事務所に注意
過払い金請求は自力でも行えますが、利息の引き直し計算や債権者との和解交渉など煩雑な要素もあり、かなり大変です。
そのため、スムーズに進めるためには法律事務所に依頼するのが必須条件となってきます。
法律事務所はボランティア団体ではありませんので、営利目的でこの代行を請け負います。
依頼には当然ながら費用かかり、その手数料や報酬は法律事務所によって異なります。
不当に高額な手数料を要求してきたり、虚偽の調査報告をするような悪質な団体(法律事務所を装った詐欺業者)も存在するようですので、依頼する業者の選定も慎重に行う必要があります。
過払い金の時効は10年です

過払い金の時効は10年です。
つまり、最終取引日から10年を経過してしまうと、過払い金を取り戻すことは難しくなります。
消費者金融業界に総量規制が入った2006年からすでに15年以上経過しているため、過払い金請求の対象となる債務を負っている方は今となっては少なくなっていると思われます。