日本・海外でのファクタリングの市場規模と業界動向

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ファクタリング

ファクタリングの取引額は世界的に増加中です。日本国内でも資金調達にファクタリングを利用する企業が増えています。

今回は、日本におけるファクタリングの市場規模の推移・歴史と、海外のファクタリング市場規模、今後の業界動向について解説します。

日本におけるファクタリング市場規模の推移・統計

【日本のファクタリング市場規模の推移】

取引額(単位:百万ユーロ)

2013

77,255

2014

51,072

2015

54,184

2016

49,466

2017

37,284

2018

49,348

2019

49,446

参照:Evolution of Global Factoring Volume (in Euro billions)|FCI

大企業から中小企業まで広くおこなわれているファクタリングですが、世界の市場規模を見てみましょう。

FCI※のデータによると、アジア太平洋地域のファクタリング市場は6830億ユーロで世界市場の23%を占めています。その中で日本は500億ユーロ弱で推移しています

なお、アジア太平洋地域のファクタリング市場のうち5,000億ユーロ近くは中国、台湾、香港に集中。アジア圏のファクタリング市場は今後もシェアの変化が予想され、各国のファクタリングの動向が注目されています。

※FCI(Factors Chain international)は国内および国際貿易売掛金勘定のファクタリングおよび資金調達に関する世界的な代表機関です。

1968年に非営利の国際団体として設立され、90カ国以上に400社近い会員企業を擁し、ファクタリングにおける国境を越えた協力のための独自ネットワークを提供しています。またファクタリング市場の成長や規模を測ることもFCIの役割の一つです。

海外のファクタリング市場規模

【2019年の各国のファクタリング取引額】

取引額(単位:百万ユーロ)

中国

403,504

フランス

349,714

イギリス

328,966

ドイツ

275,491

イタリア

263,364

海外のファクタリング市場の中でも特に大きいのがヨーロッパ市場です。ファクタリングがイギリスで14~16世紀にはじまったことも理由にあるかもしれません。

ファクタリングの歴史が長いイギリス・フランス・ドイツなども多く利用されています。

 

日本にファクタリングが持ち込まれたのは20世紀以降です。アジア市場で最も大きいのは中国、次いで日本となっています。

 

なお、世界のファクタリング市場は、2014年から2019年のあいだに約12%のCAGR(年平均成長率)で拡大しました。今後も市場が成長する可能性は十分にあります。

日本でのファクタリング市場のこれまで

日本でファクタリングが利用されるようになったのは、欧米よりもずっと後のことでした。

また、企業の資金調達手段として一般化するまでにも長い時間がかかっています。日本でのファクタリングの歴史や変化を紹介します。

企業に浸透するのは遅かった

日本のファクタリングは1970年代から利用され始めたものの、決してすぐに受け入れられたわけではありません。これは日本での商慣習も大きく影響しています。

どうして日本でファクタリングが受け入れられにくかったのか、その理由をまとめました。

当時は約束手形が主流だった

日本でファクタリングが受け入れにくかった理由の一つが、手形中心の金融市場です。

当時は手形で取引して、資金が必要になれば割り引いて調達していました。そのため、債権を現金化したいというニーズは手形取引が中心になり、ファクタリングによる資金化は広がりにくくなってしまっていたのです。

手形の商慣習が根強かったことによって、ファクタリングというもの自体の知名度も広がりませんでした。

近年になってファクタリング市場が規模を広げているのは、手形による商取引が薄れ始めたことも要因と考えられます。

売掛債権の売却に対するマイナスイメージ

ファクタリングが日本で受け入れられなかった理由には、売掛債権の売却という行為自体があまり良いイメージで捉えられてこなかったことも挙げられます。

 

企業の多くは売掛債権を売却すると「資金繰りが悪化している」「経営やキャッシュフローに不安がある」とみなされてしまうと考えてファクタリングの売却を避けてきました。

 

しかし、国は売掛債権を売却しやすいように法整備を進め、売掛債権を売却することへの悪いイメージも払しょくされつつあります。今後もファクタリング市場の拡大が期待されています。

法整備・手形取引の衰退とともにファクタリングの需要が拡大

日本でのファクタリングの需要が徐々に拡大している背景には、経済環境や法律も影響しています。どのようにしてファクタリングは広がったのでしょうか。

手形取引の減少

手形取引のピークは1990年の約4797兆円。1991年にはバブルが崩壊して手形取引は急速に減少しました。手形取引の規模は2018年には約261億円と全盛期から20分の1程度にまで落ち込んでいます。

 

手形取引が減ったのは紛失や盗難トラブルが起きやすく、コストが高かったことも要因です。

手形を発行するためには、手形用紙を銀行から購入して、手形印紙税を支払います。加えて換金でも手数料を支払うため、一つの手形にかなりのコストがかかってしまっていました。

 

手形は裏書をして取引先に譲渡する形で取引します。しかし、額面を変更することはできず、支払いに使うには不便な点もあります。盗難、紛失の恐れがあること、手形が不渡りになれば資金回収が難しいことから、流動性が低い点が手形のデメリットでした。

 

そこで普及し始めたのが電子記録債権です。電子記録債権は電子データの送受信によって債権を登録したり譲渡したりすることができます。債権の存続や帰属が可視化できるため、紛失や盗難、二重譲渡などのリスクを減らすことが可能な方法です。

この電子記録債権の普及によってファクタリングも注目されるようになりました。

債権譲渡に関する法律の整備

従来、日本の企業にとって債権譲渡は、債権を売却しなければいけないほど資金に困っているというイメージがつきものでした。その流れが変わった背景には法律の改正があります。

経済産業省は、売掛債権を活用した資金調達を促進するように政策を進め、2020年の4月には債権法を改正、債権譲渡を活用しやすくしました。

 

また1998年に債権譲渡登記制度、2005年には「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」が制定されています。

このような法整備によって、債権を誰に渡したかを法的に登録することが可能となり、二重譲渡などのトラブルを防げるようになりました。

現在では様々な種類のファクタリングが誕生している

ファクタリングは日本で一般化するだけでなく、新しい形に変わりつつあります。

さまざまな種類のファクタリングが生まれました。新しい種類のファクタリングについて紹介します。

国際ファクタリング

国際ファクタリングは、輸出取引の代金回収に使われるファクタリング手法です。

輸出取引の課題として、取引先の輸入業者からの代金回収があります。一般的には輸出貿易保険等が利用されていますが、コストや手続きの煩雑さがネックとなっています。そこで使われているのが国際ファクタリングです。

 

例えば輸出代金債権についてファクタリング会社から100%の支払保証を取得して輸出契約すれば、代金回収についてのリスクなく輸出取引をすることが可能です。

 

国際ファクタリングでは、輸出業者が日本のファクタリング会社に、輸入業者の信用保証の引受けを依頼します。日本のファクタリング会社が外国の提携ファクタリング会社に保証引受けを打診、受諾されてから債権譲渡の手続きに進みます。

 

取引先である輸入業者は外国の提携ファクタリング会社に代金を支払い、輸出業者はファクタリング会社経由で代金を受け取る流れです。

もしも代金が不払いとなった場合でも、日本のファクタリング会社と外国のファクタリング会社が連携して支払います。輸出取引のリスクヘッジ手段として今後も活躍が予想されるファクタリングです。

参照:国際ファクタリングの仕組み:日本|JETRO

保証ファクタリング

保証ファクタリングは、取引先が倒産した場合でも債権を回収できる、保険としての役割が強いファクタリングです。保証ファクタリングでは、債権の支払いを保証するため、取引先、売掛先の与信調査をファクタリング会社がおこないます。

 

利用者は、問題がなければ保証ファクタリング契約を締結して、保証料を支払います。もしも取引先が倒産したり、支払いができなかったりする場合には、ファクタリング会社が支払いをおこなう仕組みです。

診療報酬ファクタリング

診療報酬ファクタリングは、診療報酬債権を譲渡するファクタリングです。診療報酬債権は社保や国保に請求します。しかし、診療報酬債権は現金化するまでに時間がかかることがネックです。

 

診療報酬ファクタリングを使うと、ファクタリング会社を通して早期の現金化が可能なので、設備投資や運転資金に回すことができます。

家賃収入ファクタリング

家賃収入ファクタリングは、不動産オーナーが家賃債権を譲渡するファクタリングです。

マンション経営は修繕費等費用がかさみます。家賃収入ファクタリングは、金融機関からの融資を受けずに早期に資金を用意したい場合に使われています。

ファクタリングの種類に関する詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。

直近のファクタリングの市場規模は縮小傾向

世界的には活発化していたファクタリング市場ですが、日本では2011年をピークに縮小し始めています。これはフィンテック系の技術の発展や資金調達手段の多様化によるところが大きいでしょう。

日本のファクタリング市場の活発化には、より利用しやすい、柔軟に対応できるファクタリングサービスが求められます。

ファクタリングの今後の業界動向予測

世界のファクラリング取引額の推移

世界的にはファクタリング市場は拡大し続けています。

日本においてもまだまだ流動化していない、資金化されていない債権残高は膨大な金額にのぼるため、日本の法整備は債権の流動化、債権譲渡の活発化の方向に進むと予想されます。

今後日本企業が持つ債権の流動化が進めば、まだまだ市場拡大の余地があるでしょう。

 

資金調達のほか、与信管理やキャッシュフローの改善など、企業の業態や業種に沿ったファクタリングはこれからも活発化すると予想されます。

ファクタリングの市場規模まとめ

企業の運転資金は金融機関からの融資だけでなく、多くの選択肢があります。機動的な資金調達が可能なファクタリングは、世界的にも拡大期です。

ファクタリングは14世紀から続く歴史があり、今後も変化しながら経済活動に貢献するでしょう。国際化、IT化に即した形で企業経営を助ける存在になると期待されます。