債権譲渡の対抗要件の概要・満たすポイントをわかりやすく解説!

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売掛債権の回収ができないと、売上を現金化することができません。債務者に弁済能力がない時に活用される手法の一つが債権譲渡です。債権譲渡することで回収できていない債権を現金化することができます。しかし、債権譲渡は対抗要件を満たしていないと効力を主張できません。

債権譲渡の対抗要件について最近の改正を含めた内容を紹介します。

債権譲渡の対抗要件とは?

債権譲渡することによって、債権者が持っている権利が譲受人に移ります。しかし、譲受人が債権を主張するためには対抗要件を満たさなければいけません。債権譲渡の対抗要件についてまとめました。

なお、債権譲渡の詳細については以下の記事で解説しています。

そもそも「対抗要件」とは何か

日常生活で「対抗要件」という言葉に出くわすことはあまりありません。聞きなれない言葉なので、戸惑う人も多いでしょう。

対抗要件の「対抗」とは、「主張する」という意味、「要件」は「条件」と考えてください。「対抗要件」は「主張するための条件」と言い換えればわかりやすいでしょう。

 

債権譲渡で対抗要件が問題になるのは、債務者や第三者に対してです。例えば譲渡人Aさんから譲受人Bさんが債権の譲渡を受けた場合、AさんとBさんは当事者なので、対抗要件がなくても権利を主張することができます。

しかし、それ以外の当該債権の債務者や他の第三者に権利を主張するためには、対抗要件を満たさなければいけません。

債権譲渡の対抗要件には2種類ある

債権譲渡したとしても、対抗要件が満たされていなければ、権利が移転した事実を主張することができません。はじめに債権譲渡の対抗要件についてその種類を知っておきましょう。

債務者への対抗要件

債権譲渡の対抗要件の中でも、債務者への対抗要件を満たさなければ、債権の支払いを債務者に催促することができません。

 

債権譲渡の事実を知らなければ債務者は譲受人に返済する義務がないのです。そのため債権譲渡をして譲受人が新しい債権者として弁済を受けるためには、債務者への対抗要件を満たす必要があります。

第三者への対抗要件

債権譲渡の対象となる債権が、複数の相手に譲渡されている場合もあります。もしも二重譲渡されていた場合には、他の債権者など第三者に対して債権を譲渡したことを主張する必要があります。

 

債務者も譲受人が複数いると誰に支払えば良いのか判断できません。優先的に支払いを受けるためにも対抗要件を満たすことがポイントです。

債権譲渡の対抗要件を満たすポイント

上記の通り、債権譲渡では対抗要件を満たすことが非常に重要です。債権譲渡の対抗要件を満たすためのポイントをまとめました。

債務者への通知

債務者に債権譲渡の事実を伝えることはとても重要な意味があります。

当然譲受人にとっては対抗要件を満たす必要がありますが、債務者にとっても債権譲渡の事実を知らされないままに、支払い請求や督促がおこなわれても対応できません。債務者を守るためにも債権譲渡の事実を伝えて対抗要件を満たす必要があります。

 

債務者対抗要件を満たすためには、譲渡人から債務者に対して債権譲渡の事実の通知、もしくは債務者の承諾が必要です。通知は必ず譲渡人がおこないますが、譲受人が代理することも可能です。

債務者からの承諾

対抗要件を満たすための方法の一つが債務者からの承諾です。承諾を得る場合には、譲渡人と譲受人、債務者の三者が公証人役場にて公正証書を作成します。債権によっては債務者が複数いる場合もあります。債務者が多い場合などは公正証書の作成に手間と時間がかかってしまうかもしれません。

確定日付のある証書

対抗要件を満たすための条件として利用しやすいのが、確定日付がある証書を使う方法です。

確定日付とは、文字からもわかるように変更できない、確定した日付を言います。つまり、その日にその文書が存在したことを証明するものを確定日付と呼びます。

 

文書はその作成日付に重要な意味があることも珍しくありません。民法467条2項では、指名債権の譲渡の通知又は承諾は確定日付のある証書をもってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができないとしています。

 

内容証明郵便か公証人役場での公証印押印の方法で、必ず確定日付を取得してください。確定日付を得るためには、内容証明郵便で発送するか、公証人役場で公証印をもらいます。

内容証明郵便

債務者への対抗要件、第三者への対抗要件を同時に満たせる方法が内容証明郵便の発送です。

内容証明とは、いつ、どんな内容の文書を誰から誰宛てに差し出したかを郵便局が証明する制度です。証明するのはあくまで文章の内容、存在であって、文書の内容が真実であると証明するわけではありません。

 

内容証明郵便で送ると、郵便局からの局員が確定日付の取得になります。内容証明郵便は地方郵政局長が指定した集配郵便局にて利用することができます。内容証明郵便を送る場合には、事前に内容証明郵便の取り扱いができるかどうか確認しておきましょう。

 

内容証明郵便を利用するときには印鑑と、郵送する書面を自分用と郵便局の保管用を含めて3通準備します。封筒には債務者の氏名と住所を宛先として記載、裏面に差出人である譲渡人の氏名と住所を記載します。

 

内容証明は一般の郵便よりも割高です。債務者が複数いる場合はそれぞれに送らなければいけないので、コストもかかります。そこで債務者が多い場合には、債権譲渡登記も使われています。

債権譲渡登記

債権譲渡登記制度は、より簡便に債務者以外の第三者に対しての対抗要件を満たすための制度です。債権譲渡登記制度は、法人の資金調達手段が多様化している状況を鑑み、金銭債権の譲渡などをする場合の簡便な対抗要件制度として平成10年から実施されています。

 

さらに平成17年からは更なる資金調達の円滑化・多様化を図るため「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」が施行され、債務者が特定していない将来債権の譲渡についても、登記によって第三者に対する対抗要件を備えることが可能となりました。

 

債権譲渡を内容証明で通知する方法では、債権者や債務者が増えれば増えるほど手間も費用も増大します。債権譲渡制度は手軽に低コストで債権譲渡の対抗要件を満たせる方法として生まれました。登記制度があることによって、金融機関からも債権を担保にした融資を受けやすくなり、資金調達のチャンスが広がります。

 

債権譲渡登記の手続きは東京法務局で受け付けていますが、自宅やオフィスのパソコンからオンライン申請ができる点も大きなメリットです。

参考:登記 -債権譲渡登記-|法務省

将来債権譲渡の対抗要件について

債権譲渡で対象になる債権は現在存在しているものだけとは限りません。将来的に保有することになる債権を担保にとるという方法は、実務上広くおこなわれています。

 

例えば、新しい取引先と取引しようとする場合に、取引先に担保になるような資産がないケースを想定してください。新しい取引先なので担保が欲しいと考えるものの、不動産等の担保になる資産がないケースです。

 

このとき、取引先が将来安定して売上が期待できる、継続して取引している売掛先がある場合に、将来の債権を譲渡する方法があります。

 

このようにすでに継続的、反復的取引をしている取引先がある場合、その債権を譲渡することで担保にする取引は実務上広くおこなわれ、判例でも認められています。さらに民法改正によって以前は規定されていなかった将来債権の譲渡についても規定されました。

 

将来発生する債権を担保に取るためには、将来保有することになる債権を譲渡する契約を締結します。この場合も対抗要件を満たさなければ、担保に取った債権の権利を主張することができません。

 

ただし、将来債権が譲渡されたことを取引先に知られてしまえば、信用がない印象を持たれる恐れがあります。

 

そこで、将来債権も通常の債権と同様に登記することで、第三者対抗要件を備えることができます。つまり、将来債権譲渡をする場合にも登記すれば、取引先に知らせることなく第三者対抗要件を満たせるということです。

 

債権の取り立ても、当面は譲渡人がおこない、もしも債務不履行などが起これば譲受人が担保権を実行して直接通知・取り立てをおこなうという方法であれば、取引先に不安を与えることなく資金調達が可能です。

債権譲渡の対抗要件まとめ

債権譲渡は、資金調達をより柔軟にして機動的に資金を動かすためにも活用されている手法です。債権譲渡の対抗要件についても、民法の改正によって法制度が整備されています。

債権譲渡をする際には、対抗要件を具備するためにどのような方法があるのか、ケースごとに適した方法はどれかを比較検討してください。