企業にとっての資金は、よく人間の血液にたとえられます。どれだけ力を尽くして企業を大きくしようとしても、適切な資金繰りで資金がスムーズに循環していなければ成長は期待できません。
資金繰りを改善するためにはどのような方法があるのかまとめました。
資金繰り改善の一歩目は現状把握
資金繰りを改善するために、まず優先すべきなのは現状把握です。
現状がどのようになっているのか、どこに課題があるのかを突き止め改善策を検討します。現状把握のために必要な2つのことについてまとめました。
キャッシュフロー計算書の作成
キャッシュフロー計算書は、企業の複雑な資金の流れをキャッシュの視点でまとめた表です。
貸借対照表・損益計算書とともに、財務三表の一つに数えられます。
中小企業では作成は義務付けられていませんが、キャッシュフローの正常化のためにも作成することをおすすめします。
キャッシュフロー計算書では、前期や期首と比較して現金が増えたのか減ったのかを確認可能です。プラスならキャッシュフローは良化している、マイナスならキャッシュフローは悪化していると考えます。
キャッシュフロー計算書の作成時は、営業活動・投資活動・財務活動の3つの区分に分けて考えます。
たとえば営業活動によるキャッシュが減っている場合は売上の減少や信用取引の増加が原因、投資活動のキャッシュが減っている場合不動産購入が原因など、区分を分けることでキャッシュフローを悪化させている原因が見えやすくなるのです。
どこに課題が潜んでいるのかを知るためにも、キャッシュフロー計算書を作成してみましょう。
資金繰り表の作成
キャッシュフロー計算書だけではわかりにくい資金の細かい流れは、資金繰り表を作成すれば見える化できます。
資金繰り表はお金の出入りを記録しまとめた表で、直近の取引やお金の流れを把握するために使います。
資金繰り表作成時は、お金の出入りが発生する全ての取引を記載してください。1日ごとに入金と出金を記載し、さらに予定されている将来のお金も記載します。
予定されている将来のお金とは、金融機関への返済や給料・家賃の支払のほか、売掛金の入金予定などです。
資金繰り表を作成することでお金の流れの把握と問題の分析ができるため、締め日や入金予定の見直しもできます。
資金繰りの改善方法
資金繰りやキャッシュフローの問題点を把握したら、いよいよ改善に着手します。資金繰りの具体的な改善方法について詳しく見ていきましょう。
売掛金の支払いサイトを改善する
基本的に出るお金は遅く、入るお金は早くすることで資金繰りは改善していきます。そのためにまず見直したいのが、売掛金の支払いサイトです。
短いほど資金繰りに余裕が生まれます。支払いサイトを早められそうな取引を探し、変更できないか掛け合ってみましょう。
なお売掛金は正確に管理しておかないと、支払い遅れや貸倒が発生する可能性があります。売掛金管理台帳を作成しておけば、支払いサイトの改善にも役立ちます。
どうしても支払いサイトが短くならない場合には、売掛債権を現金化できる「ファクタリング」を利用するのも一つの手です。
仕入れ先への支払いを先延ばす
出るお金を遅くするためには、買掛金の支払いサイトを延ばすのが有効です。
既存の仕入れ先に支払いを先延ばしできないか交渉してみてください。また新しい仕入れ先と取引する場合には、支払いをできる限り遅くできるように交渉・契約します。
なお当然取引先はできるだけ早く回収したいと考えているため、相手にとって良い条件を提示する必要があります。例えば、支払いを先延ばしする代わりに仕入れ量を増やす、仕入れ先を一本化するなどです。
また、他の事業との兼ね合いで現在の支払日では難しいと素直に伝えることで、便宜を図ってもらえることもあります。
不要な在庫・資産を処分する
資金繰りを改善するには、流動性が低い資産の扱いも見直します。
不良在庫や使わなくなった資産はできる限り処分してしまいましょう。
不良在庫や使わない資産は、保管のための倉庫の家賃や在庫スペースの確保など、保有しているだけでコストが発生します。早めに処分するのが得策です。
「資産を処分すれば売却損が出てしまうのではないか」と考える方もいると思いますが、売却損を計上すれば利益から差し引くことで節税も可能です。
資産や在庫は期間を定めて循環させるようにルールを策定しましょう。一定期間が過ぎたら処分するように決めておくと、処分するタイミングに困りません。
借入金の返済額を見える化・一本化する
いくつかの金融機関から借入している場合には、一覧にして支払いのスケジュールと金額を見える化しましょう。
キャッシュフロー計算書と資金繰り表で借入金の返済状況を把握してください。せっかく利益が出ていても、月々の返済額のほうが大きければ資金繰りは苦しくなるばかりです。
複数社からの借入金は、借り換えしてまとめることで月々の返済額を減らしたり、利息を減らしたりできる場合もあります。
さらに、支払日が別々の借入金であれば、自社に都合がよい支払日のほうにまとめることで資金繰りを楽にできるかもしれません。
外注・アウトソーシングを活用する
無駄なコストは徹底的に削減するようにします。例えば、自社で行う必要がない業務については外注やアウトソーシングを使います。
外注やアウトソーシングの良い点は、事業規模や必要な業務量に合わせてコスト負担を調整できる点です。
自社で人を雇用するよりも社会保険等の負担も少なくなります。給与計算や勤怠管理、経理業務といった仕事は、外注やアウトソーシングも検討しましょう。
利益率を高める
売上が少なくて資金繰りが改善しないといった場合には、利益率の改善が必要です。売上が減っても利益を維持できれば、会社に残るお金の額は変わりません。
自社の商品の利益率を把握して、利益が出やすい商品を重点的に売るといった改善方法を考えます。
利益率が低い商品の販売を抑えられない場合、販売費や一般管理費の削減を検討しましょう。
また、利益率が低い商品をフックにして、利益率が高い商品を売る導線を作ることも大切です。
場合によっては低利益率商品の販売価格を上げるか、原価を下げられないかも検討しましょう。
リースを活用する
資金繰り改善のためには、必要な設備も購入するのではなく、リースを上手に活用するのがおすすめです。
例えば飲食店の調理器具やオフィスのコピー機等は、リース料を支払って利用するようにします。リースは大きな金額が一気に流出することを防げるのがメリットです。
また、リースはコストを把握する上でも優秀です。何のための費用が月々どれだけかかっているかがはっきりするので、経費を見直すときにもわかりやすいでしょう。
加えて、オフィスの移転や業態の変化にもが対応しやすいくなります。
特に起業したての場合は、いきなり高額の経費を支払うよりも、リースを活用して負担を減らすようおすすめします。
資金繰り悪化につながる節税対策をやめる
経営者であれば、誰しも節税のことを考えるでしょう。しかし、節税が資金繰り悪化につながっているケースもあります。
例えば、生命保険に入ったり、車両を購入したりすれば損金を計上して利益を減らせます。
これは純利益を減らすことによってかかる税金を減らす方法ですが、資金繰りの面では正解と言い切れません。
必要性がない経費を作れば、資金繰りには悪影響です。節税のためといって、経営に不要なもの・サービスを買わないよう注意しましょう。
営業キャッシュフロー内で投資を実行する
事業拡大のための新設備の導入やプロモーションなど、ビジネスを進めるうえで投資しなければならない場面は多くあります。
通常、投資に関わる資金の流れは投資キャッシュフローに分類されます。投資キャッシュフローは先行投資として資金を出すため、マイナスになるのが普通です。
投資額が大きくなればそれだけ資金繰りは苦しくなるため、営業キャッシュフローの範囲で投資を抑えるのが理想です。
投資キャッシュフローが営業キャッシュフローよりも大きい場合は、投資のために手元の資金を使っているか、借入等を利用しなければいけません。
新しい設備を導入するのであれば、その設備投資がもたらす利益がどの程度かシミュレートし、その後のキャッシュフローが悪化しないよう対策を講じる必要があります。
ファクタリングや手形割引を活用する
資金繰りを改善するためには、手元にある現金を増やすことが大切です。
しかし、売掛金や受取手形は入金までに時間がかかってしまうため、手元の現金は増えません。せっかく売上があっても、自由に資金として使うことができないのです。
その結果、帳簿上の利益があるのに支払いができなくなったり、黒字倒産したりする企業もあります。
売上を早期に現金化するには、ファクタリングや手形割引を利用しましょう。
売掛債権を業者に買い取ってもらうことによって、資金繰りが改善します。
ただし、この方法は使いすぎると手数料等の負担が大きくなって利益を圧迫することがあります。資金繰りが悪くなった場合にタイミングよく利用するのがおすすめです。
資金繰りを改善するためにファクタリングを活用しよう
資金繰りを改善するためには、現金の流れの分析と改善が欠かせません。まずはキャッシュフロー計算書や資金繰り表を作成し、そこから改善に着手しましょう。
改善するためには、売掛金の回収を早める、仕入れの支払いを遅らせるなどが有効です。難しい場合には、ファクタリングや手形割引で必要な資金を調達しましょう。