資金繰りが苦しい時にとるべき対処法

資金繰りが苦しい時にとるべき対処法

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資金繰り

企業や店舗の経営状態は、社会の変化や景気の影響を受けます。特に中小企業や個人事業の場合は社会情勢を受けて資金繰りが苦しくなることも珍しくありません。今回は資金繰りが苦しい時に、どのような対処法をを採れば良いのか詳しく解説します。

資金繰りの苦しい会社がとるべき対処法

資金繰りが苦しい時、まずは事業を継続する方向で対処法を検討します。事業継続を念頭に置いた場合の対処法には以下のようなものがあります。

資金調達の実施

資金繰りが苦しい時に真っ先に挙がる対処法は資金調達でしょう。銀行からの融資や社債の発行などで、事業資金を調達します。

また、手持ちの資産を売却して資金調達するという方法もあります。

売却できる資産には、会社所有の不動産や社用車、建物等があります。また、売上になる見込みがない在庫や、業務上不要な絵画や装飾品も売却可能です。その他、売掛金を売却するファクタリングという手段もあります。

こういった資産の売却による資金調達をアセットファイナンスと呼びます。アセットファイナンスは、負債を作らずに資金調達でき、決算書類をスリム化することもできる方法です。それまでかかっていた倉庫代や税金といった経費も削減できます。

完全に手放す場合は、代替の設備購入やリース代等の費用が発生するリスクはないか考えておきましょう。なお、不動産等の資産は売却に時間がかかるケースが多いため、緊急性を含め検討する必要があります。

経費の削減

経費の削減には、資金調達と同様の効果があります。支出を抑えて、お金を減らさないようにすれば事業や投資に使えるお金が増えます。

まずは消耗品等の経費を見直して、削減できるところから削っていきましょう。役員報酬や会食費用といった項目もチェックしてみてください。

福利厚生も削減しやすい部分ですが、削りすぎると従業員の不満につながります。時間をかけて育てた従業員が離れてしまう可能性もあるので、無理な削減は控えましょう。

支払いの優先順位の見直し

資金繰りが苦しい時は、支払いの優先順位も見直す必要があります。もちろん、支払いは全て必ず履行しなければいけませんが、計画性を持たずに請求書が回ってきた順に支払っていると、会社の存続にかかわる事態に発展する恐れがあります。

優先順位を上げるべきなのは、手形のようにすでに支払い期日が決まっているものです。支払いが遅延すれば信用が低下して事業自体に影響します。

逆に銀行への返済は、相談すれば期日を延ばしてくれたり、余裕がある返済計画を立て直してくれたりすることもあります。さらに税金や社会保険料も相談すれば分納に応じてもらえることがあります。

このように先に繰り延べられるものがないかチェックし、支払いの優先度を見直してみましょう。

役員報酬支払いの繰り延べ

直近の支払いが難しい場合や、資金が調達できなかったときに使われる手段が役員報酬の繰り延べです。経営者の報酬は後回しにして、その分を運転資金として使います。

経費の処理として役員報酬を未払計上する方法や、一度役員報酬を支払ったことにして社会保険料を支払ってから、すぐに会社に貸し付けるといった方法があります。

また役員報酬の額を変更することもできますが、いずれにせよ法律に則って行うようにしてください。

なお、役員報酬を未払計上する際は決算までに採算しないと会計上適切に損益管理できないため注意が必要です。

金融機関・取引先への支援要請

資金不足が自社だけで解決できない場合には、金融機関や取引先への支援要請も検討してみましょう。返済や支払いを待ってもらえる場合もあります。

もちろん、金融機関も取引先も回収できるお金は早めに回収したいと考えるでしょう。しかし、回収を急いだばかりに会社が倒産してしまえば、金融機関は残りの返済が受けられず、取引先も貸倒れになってしまいます。

会社を継続させるための相談として、金融機関や取引先に声をかけてみてください。

資金繰りがどうしても回らない場合の検討材料

資金繰りがどうしてもうまく回らない、財務が改善しない場合には、より抜本的に会社を変えなければいけません。どのような方法があるのか紹介します。

事業縮小

事業計画の甘さや想定外の事象が資金繰りの悪化を招いているかもしれません。特に、社会情勢の変化や災害によって影響を受け、事業計画の見直しを迫られることはよくあります。

資金繰りが苦しくなったタイミングで、事業計画を見直して縮小を検討してください。例えば、利益率が悪い、赤字になっている商品や部門があれば、本当に継続していくべきなのかを考えます。

もしも将来的に必要になる事業や製品だとしても、資金繰りが悪い場合には一度縮小することを検討しましょう。資金繰りが良くなってから再度の拡大を目指します。

法的整理

資金繰りが悪化し最終局面になると、法的な対応を考えなければいけません。弁護士に相談して法的整理に進みましょう。

取引先や金融機関との信頼関係もあり、心理的には辛いことですが、ズルズルと続ければ傷口が広がってしまいます。

法的整理に進むと金融機関や取引先の債権は不良債権として処理されます。
会社の法的整理に関係する法律・手続きは以下の通りです。

・民事再生法

民事再生法は、主に中小企業の再生に用いることを想定した法律です。後述の会社更生法と違い経営陣の刷新は法律上必須ではない点が特徴です。

再生手続開始の申立から決定を受けて再生手続きを開始します。個人の再生手続きの特則として、小規模個人再生と給与所得者等再生の手続きも設定されています。

・会社更生法

会社更生法は、経営困難となった株式会社を対象とし、事業の更生を目的とした更生手続きについて定めた法律です。

担保権者や株主についても更生手続の対象となることが大きな特徴です。また抵当権・質権といった担保物権について別除権を認めていないので、更生手続き中の担保権の実行は禁止、中止になります。

・特別清算

清算とは、会社の解散や破産で活動を終了する場合に、債権債務を解消し、残余財産を構成員に分配する手続きを言います。

特別清算は、申し立てによって裁判所の命令によって開始され、裁判所が関与して行われる清算手続です。

・破産法

破産法は経済的に破綻した個人や法人の清算や再建を定める倒産法の基本となる法律です。

破産には多くの手続きが必要になります。破産法には、申立てから破産管財人による債務者の財産管理と換価、さらに総債権者への公平な分配など、破産手続きについて詳しく定められています。

M&A(事業譲渡)

M&A(事業譲渡)

経営者の負担を減らして事業を継続できる方法として、M&Aや事業譲渡が選択肢になることもあります。これは資金繰りが苦しい場合だけでなく、経営者の高齢化による事業承継や多角化した事業を一本化する場合にも有効な手段です。

以前は大企業が実施することが多かったものの、近年は中小企業でも活用されています。

M&Aや事業譲渡が成功しやすいのは、将来的に有望で管理体制が整っている事業です。業績が悪化、低迷している、経営資源が疲弊しているような事業は現実的には譲渡が困難なケースが多いでしょう。

資金繰りが厳しいと感じた時に頼れる相談先

資金繰りが苦しくなった時に決してやってはいけないのが、経営者や経営陣だけで抱え込んでしまうことです。

外部の人間のほうが客観的な視点から有効な解決策を提示できるケースは珍しくありません。どういった相談先が考えられるのか紹介します。

顧問の税理士

まず相談相手として挙がるのが顧問の税理士です。資金繰りの相談は、会社のお金や決算書類について最も詳しいであろう顧問税理士に相談するのが一番です。

お金のプロなので、状況に応じた具体的な解決策を提示してくれるでしょう。

国や県で設置している資金繰りの相談窓口

資金繰りの相談は、国や地方自治体でも請け負っています。国の相談窓口であれば経済産業省の中小企業 金融・給付金相談窓口金融庁の相談ダイヤルがあります。

地方自治体の相談窓口や融資制度は、自治体によって異なります。例えば東京都は、フリーランスを含む個人事業主特別相談窓口(資金繰り(融資)に関する相談)を設置しています。

これは新型コロナウイルス感染症によって事業に影響を受けた人を対象にした資金繰り相談窓口です。無料で相談できるので、まずは自分の地方自治体にどのような窓口が設定されているのか調べてみてください。

行政書士・中小企業診断士

資金調達をするためには、書類作成や手続きが必要になります。許認可をとるためにはどうしたらよいのか、のちのトラブルを防止するためにはどうしたらよいのか、といった相談は行政書士や中小企業診断士が頼りになります。

行政書士や中小企業診断士は、企業の相談役としてコンサルティングや官公庁との話し合いもおこなう立場。資金調達に関しても補助金や助成金の申請や事業計画書の作成等、心強いパートナーになってくれます。

資金繰りで苦しまないための事前対策

現状まだ資金繰りに悩んでいないという方も、資金繰りで苦しまないために、事前対策を講じておきましょう。考えられる事前対策として以下のようなものがあります。

資金繰り表の作成

資金繰りが苦しくなる場合、資金のコントロールができていない可能性があります。

資金繰り表は、会社が関係する全てのお金の出し入れをまとめたものです。当月だけでなく、税金や保険等将来の支払いまで分かっているものは全て記載します。

資金繰りの悪化は、時間をかけて少しずつ深刻化していくものです。資金繰り表を作成することによって、どこで資金繰りが苦しくなるのか、資金難の兆しを事前に把握して対策が可能になります。

資金繰り表のつくり方については、以下のページで詳しく解説しています。

取引条件の改善

資金繰りが苦しい状態が慢性化している場合、支払いサイトを確認してみてください。受取手形や売掛金の回収にかかるまでの時間が長すぎると、買掛金や経費の支払いに入金が間に合わず資金不足が続きます。

こういった場合には、取引先に掛け合ってより早く入金してもらうか、逆に支払いを遅らせられないか交渉してみましょう。

交渉がうまくいかなかった場合は、売掛債権を売却するファクタリングを利用して手元の資金を殖やす方法も検討してください。

在庫管理の徹底

大量の在庫を抱えている状態も資金難の原因になります。在庫はお金がものに変わっている状態です。お金を支払って仕入れているため、在庫が増えることは資金の減少を意味しています。

資金回収につながらない在庫は資金繰りを悪化させるため、適正在庫で管理するように努めてください。まずは最小量の適正在庫を定めて、キープできるようにしてみましょう。

資金繰りが苦しい時の対処法まとめ

資金繰りが悪化した時、どんな方法でも良いから資金を集めようとしてしまいがちです。

しかし、なぜ資金繰りが苦しいのか、原因を把握しないと焼け石に水になってしまうかもしれません。

資金繰りが悪化した場合には、取引先との契約や在庫状況、保有資産などに無駄がないかくまなくチェックしましょう。どの方法で解決すればいいのか見極めて、適切に対応していきましょう。