売掛金の未回収リスクへの対策と支払いが遅延した場合の対応

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資金繰り

売掛金の未回収リスクは、掛け取引を行っている上ではどうしても付いて回る問題です。そのため、日ごろから未回収リスクの対策を準備しておく必要があります。

売掛金未回収時は、速い対応が債権回収の可能性を高めます。支払いが遅延した時に、迅速に対応できるように、備えておきましょう。

未回収リスクへの対策と支払い遅延が起きた時にするべきことを紹介します。

売掛金の未回収リスク対策の重要性

売掛金を回収できないリスクへの対策は、掛け売りを行う企業にとっては必須です。現金だけでの商売は難しいため、掛け取引はリスクがあっても続けなければいけません。掛け取引の怖さと未回収の売掛金に関するリスクをチェックしてみましょう。

掛取引に付きまとう未回収リスク

売掛金の焦げ付き・貸し倒れリスクは、掛け売り取引で見過ごせないリスクです。売掛金を回収できなければ、資金繰りが悪化し、自社が予定していた支払いも滞る恐れがあります。

掛け取引は、企業間の取引をスムーズにし、後払いのために資金繰りを快適にしてくれる取引方法です。自社も買掛金で仕入れを行っていれば、掛け取引のメリットや欠かせない理由は分かると思います。しかし、売掛先の経営状況によって回収できなくなるリスクもはらんでいることを忘れることはできません。

経営状況の悪化による支払いの遅延、倒産、悪意のある支払い拒否など、色々なケースで未払いリスクは起こります。

>>資金繰りとは

未回収の売掛金には時効がある

未回収の売掛金には時効があり、時効を過ぎてしまうと時効を主張されて、回収不能となることもあります。未回収の売掛金の時効は、1~3年の消滅時効です。売掛金の種類によって時効の期間は異なります。

売掛金の時効ですが、短いものだと、運送代や宿泊費、飲食代などが1年となっています。商品の売掛代金は2年間、診療報酬や設計・施工費用は3年間です。

ただし、2020年以降の債権は、改正により全て「債権者が権利を行使できると知ってから5年」となりました。

売掛金の時効は、期間が経過したのち、債務者が時効を主張することで成立します。また、債権者が売掛債権の請求を行うと、請求した日から6カ月間の猶予期間が生まれ、その間に時効を中断する請求も可能です。

回収が遅れている売掛債権があったら、時効を迎える前に適切に立ち回り、まずは時効を止めることが大切です。

参考記事:民法(債権法)改正

最悪の場合連鎖倒産の可能性も

売掛債権の未回収では、自社の資金繰りを悪化させ、経営不振を招く恐れがあります。取引先の倒産で売掛金を回収できないと、自社も経営状況が悪化し、連鎖倒産となりかねません。

倒産による回収不能となった債権は、全額回収が難しく、法的手続きなどで回収に時間がかかることも多いものです。その間に、回収予定だった売掛金を見込んで行った自社の掛け取引や手形の支払い日が来ると、自社も不渡りを起こし、倒産リスクが高まります。

売掛金未回収リスクへの有効な対策

売掛金の未回収リスクは、あらかじめ有効な手立てを取って、できるだけ抑えておくことが大切です。回収が不能になってから始めるのではなく、早めに準備しておきましょう。売掛金回収リスクをなくす、あるいは緩和する対策を紹介します。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権を買い取るサービスのことです。売掛債権を受け取った企業は、ファクタリング会社にその債権を買い取ってもらい現金化します。

ファクタリングは、売却によって早めに現金を受け取る目的だけでなく、「償還請求権なし」の条件によって未払いリスクに備えるためにも使えます。

償還請求権なしのファクタリングであれば、業者が買い取った後は売掛先の倒産などで売掛金を回収できなくても、売却した企業は支払い義務を負いません。

>>ファクタリングとは?

売掛保証

「売掛保証」とは保証金を支払い、売掛債権に保証契約をつける方法です。いざ倒産などで売掛金の回収ができなくなると、保証会社が売掛金を支払ってくれます。

これは、売掛金に対する掛け捨ての保険のようなものです。回収リスクは抑えられますが、倒産せずに売掛金が支払われれば保証料は無駄になります。

与信管理の強化

与信管理の強化も、未回収リスクを引き下げる方法の一つです。完ぺきに防げるとは言いませんが、与信管理を慎重に行うことで、危険度と高い取引を控えてリスクを抑えられます。

なお、与信管理を自社で行えない場合には、外注化することも可能です。

売掛金の支払いが遅れた場合の対応

売掛金の支払いが遅れた場合には、早急な対応が必要です。ただし、すべての支払いの遅延が貸し倒れに繋がるわけではないため、取引先へのアプローチは慎重に行いましょう。売掛金支払いが遅れた時の対応を順序通りに説明します。

迅速な通知

売掛金の回収のためには迅速に動くことが大切です。支払いが遅れていることが発覚したら、まずは早急に通知します。支払いは故意ではなくうっかり忘れている、勘違いしていることもあるため、丁寧にお知らせしましょう。

特に、懇意にしている一般的な取引先の場合、経営不振などがなければ入金忘れなどが原因の可能性が高いです。そのため、債権回収がすぐに解決することも少なくありません。

入金日が近づいたら、あらかじめお知らせしておくのも良いでしょう。

時効のリセット

時効対策として、売掛債権が消滅しないために時効のリセットもしておきたいものです。時効は、売掛金の請求と差押え、債務承諾書などによる承認によって中断、リセットされます。少額でも回収できる場合には、まず支払ってもらい、時効をリセットしましょう。

内容証明の郵送

内容証明郵便は、送った文書の内容まで郵便局が証明してくれる郵送方法です。これによって督促状を送ることで、督促を行った事の証明が残り、その後の訴訟で役立ちます。

相手もその点を把握していれば(通常は知っています)、内容証明で督促されたことだけでもプレッシャーになり、支払う態度を見せるでしょう。

支払い督促制度の利用

支払い督促制度は、裁判所が債務者に対して支払いの督促状を送る制度です。

支払督促制度を利用することで、支払わない取引先へプレッシャーを与え、さらに強制執行への第一歩を踏み出せます。督促状から2週間が経過すると、強制執行できます。

少額訴訟

売掛金回収の方法として、少額訴訟を起こすことも考えられます。

少額訴訟とは、1回の審理で判決まで行えるスピーディーな訴訟です。売掛金60万円以下の場合には少額訴訟ができます。弁護士がいなくても訴訟はできますが、知識や自信がない、手間をかけられない場合には弁護士に相談しましょう。

通常訴訟

60万円以上の売掛金に対しては、通常訴訟を行います。

訴状や証拠書類の準備など、専門知識も必要なので、基本的には弁護士に依頼することをおすすめします。裁判を行うのは、140万円以下の場合には簡易裁判所、140万円より高額の場合には地方裁判所です。

一回で終わる少額訴訟に比べ、通常訴訟は裁判期間も長くなります。資産の仮差押えなどで債務者が資産を他の人の名義に書き換えるリスクをなくすことも必要です。

補足:遅延損害金の請求も忘れずに

遅延損害金は、民法や商法で定められています。

支払いが遅延した売掛債権の請求では、遅延損害金の請求も必須です。2020年3月までの契約では年利6%の旧法が適用、それ以降は改正後の年利3%となります。

>>売掛金の遅延利息の請求可否

貸し倒れになった場合の経理処理

売掛債権が貸し倒れになった場合には、貸し倒れ処理を行います。勘定科目は貸倒損失・貸倒金を使用します。

売掛金を貸倒損失にするためには、借方「貸倒損失」貸方「売掛金」で処理します。全額を処理する場合の他、一部の金額のみを貸倒損失に計上することも可能です。また、備忘記録として1円の売掛金を残すことで、決算書で貸倒になった売掛金の存在が分かるようになります。

売掛金の回収不能時の対応は考えたくないものですが、仕訳その他処理の詳細は以下のページで紹介します。

>>回収不能な売掛金の仕訳