売掛金と売上計上のタイミングの違いとは?

売掛金と売上計上のタイミングの違いとは?

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資金繰り

売掛金と売上は全く異なる勘定科目です。ただ、それを知っていても、「何が違うか」と問われると、端的に答えるのは難しいのではないでしょうか。

「売掛金は売上が発生した時に発生する」といった簡単な覚え方をしている人もいるかもしれません。ここではより細かく、売掛金と売上計上のタイミングや、具体的な仕訳について解説しています。

売掛金と売上の違い

まず、売掛金と売上の違いについて簡単に説明します。売上と売掛金は、どちらも売上を上げた時に発生する勘定科目です。

売上は本業で商品・サービスを販売した際に計上する「売上高」を意味する言葉です。その取引(または該当期間)で商品を売った金額を表します。売上の勘定科目は収益として損益計算書に計上されます。

一方売掛金は、売上の対価として発生した「将来的に金銭を受け取る権利」を表す勘定科目です。簡単に言えば販売した金額のうち「ツケ」にした金額です。資産として貸借対照表に計上されます。

売掛金と売上の計上タイミングの違い

売掛金と売上の計上タイミングの違い

売掛金と売上の大きな違いは、計上後の処理です。売掛金と売上それぞれの計上タイミングを紹介します。

売掛金の計上タイミング

売掛金は基本的に売上を計上するタイミングで計上します。経理上売上処理をするのは、原則として商品を納入した時やサービスの提供を完了した時です。

貸方に収益の勘定科目である売上を計上するとともに、借方に対価として手に入れた資産(売掛金や現金)を計上します。

このタイミングで現金を受け取らず、後払いになると売掛金で処理することになります。売上計上基準については、後述します。

売上計上のタイミング

一般的には、商品の引き渡しやサービスの提供をもって、売上を帳簿に計上します。売上の計上時期は取引の内容によって異なります。

具体的には、販売業であれば商品を引き渡したタイミングとなる引き渡し基準、サービス業ならサービスを提供したタイミングの役務完了基準があります。

また、建設業の場合は、完成した時点で計上する工事完了基準のほかに、工事の進捗に応じて計上する工事進行基準も使われています。

出荷基準と検収基準

店舗での商品販売のように、代金の決済と引き渡しが同時の場合もありますが、取引によってはタイミングがずれることもあります。例えば輸送に時間がかかるケースです。海外に輸送するといった商品の場合は出荷から受け取りまでに時間がかかります。

どのタイミングで売上の発生とするかは「出荷基準」と「検収基準」に分かれています。

■出荷基準

出荷基準は、商品を出荷した日に売上を認識する方法です。例えば工場から商品を払い出したときやトラックに積み込んだ時に収益として計上します。出荷日であれば、自社でも把握しやすいため処理コストが少なく済みます。

■検収基準

検収基準は、商品を納品してから得意先が検査、受け入れしたときに収益を認識する方法です。売上の計上が遅くなりますが、商品の品質や種類等を確実にチェックしてからとなるため、返品対応等の経理処理が少ない点がメリットです。

出荷基準と検収基準の選択

出荷基準と検収基準は、事業の内容等に合わせて自社に合ったものを選びます。事務処理の面からは出荷基準のほうが簡便です。また、出荷基準のほうが早く売上を計上できます。

しかし、検収基準のほうが確実性をもって処理できるでしょう。どちらの基準を選ぶかは、その会社の任意です。

採用した基準は継続して使うことになるので、事業の種類や取引先のことを考慮して採用する基準を選択してください。

補足:企業会計原則による認識基準

企業の財務会計は、企業会計原則に基づいて実施されます。企業会計原則で定められた収益認識のタイミングは以下の3種類です。それぞれ確認しておきましょう。

■発生主義

発生主義は、事実の発生に伴って認識をする基準です。売上で言えば、注文を受けた時点で売上を計上します。

しかしこれでは、キャンセルになったり、商品やサービスを提供できなかったりする場合に架空の売上となってしまいます。よって、売上には発生主義は使われていません。

■実現主義

実現主義は、商品やサービスを提供して、その対価を受領した時に収益を認識する基準です。実現主義での収益認識の基準は以下の2つです。

  1. 1.商品やサービスの提供
  2. 2.現金等価物(現金、売掛金、モノ等)の受領

売上で言えば商品を提供して、その対価を受け取った時点で計上します。ただし何をもって実現するとするかということが問題です。

認識基準は、出荷基準や検収基準、納品基準、役務完了基準等が使われます。

■現金主義

現金主義は現金の収支に基づいて、収益を認識する基準です。商品代金を現金や預金で受け取った時に売上を認識します。現金主義は、相手の支払いを遅らせてもらって計上時期を操作できてしまうため、基本的には使われていません。

企業会計原則では、収益は実現主義、費用は発生主義が原則です。売上はより慎重に判断し、費用は発生した時に利益と対応するように計上する形が一般的に使われています。

売掛金と売上に関するケース別の仕訳

売上も売掛金も会計処理をしていれば、目にする機会が多い勘定科目です。実際にはどのような処理になるのか、ケース別の仕訳を紹介します。

現金で売り上げた時の仕訳

現金取引は商売の基本です。初めに商品やサービスの対価として現金が増加する取引を紹介します。

【事例1】

商品を販売して、対価として100,000円を受け取った。

借方 貸方
現金

100,000

売上

100,000

売掛金で売り上げた時の仕訳

【事例2】

商品100,000円を売り上げた。支払いは掛とする。

借方 貸方
売掛金 100,000 売上 100,000

売掛金を回収した時の仕訳(消し込み)

売掛金で売り上げた場合には、入金時に資産として計上した売掛金を消し込む処理をおこないます。売掛金の支払い時に振込手数料が差し引かれて振り込まれるケースでは、借方に支払手数料勘定(費用)が発生します。

【事例3】

売掛金100,000円が普通預金に振り込まれた。

借方 貸方
普通預金 100,000 売掛金 100,000

【事例4】

売掛金100,000円が普通預金に振り込まれた。振込手数料300円が差し引かれている。

借方 貸方
普通預金 99,700 売掛金 100,000
支払手数料 300

売掛金が一部入金された時の仕訳

売掛金が一度に全て支払われるとは、限りません。分割払いになった時には、支払われた分の売掛金の金額だけを消し込んで入金処理をします。

【事例4】

売掛金100,000円のうち、50,000円が普通預金に振り込まれた。

借方 貸方
普通預金 50,000 売掛金 50,000

その他仕訳や売掛金に関する詳しい内容は下記の記事で解説しています。

売掛金と売上の計上タイミング・仕訳の違いまとめ

売掛金は資産、売上は収益と、これらは全く異なる勘定科目です。計上タイミングは、売掛金は売上発生時、売上は自社が選択する認識基準によって異なります。

事業を続けていく中で、経理について理解することは大切です。売掛金と売上の計上タイミングの違いを理解しておかないと、売上が増えているのに手元に現金のゆとりがないといった事態を招きかねません。

それぞれのタイミングの違いを把握して、円滑な経営を目指しましょう。